DIME付録アンプ付きスピーカー(モノラル)をボリューム付きでステレオ化してみた

藤本健さんのエントリー「雑誌DIME付録のアンプ内蔵ステレオスピーカーは欠陥品!?」など一部で話題になっていますが、DIME誌2011年01号(2010年12月21日発行)付録の「DIME JET STREAM ステレオスピーカー」が実はアンプの回路がモノラルで組まれているために、モノラル出力になっていました。
このエントリーは、付録回路をなるべく生かしつつあまりお金と手間をかけずにステレオ化(とボリュームを付ける)してみたレポートです。

(2011.01.04追記:私自身では確認できておりませんが、上記藤本さんのBlogエントリーに寄せられたコメントによりますと、きちんとステレオで音の出る回路/基盤のものも有るようです。小学館のコールセンターにて不具合の有るものは交換に応じてるようですので、不具合のある方は付録記載の問い合わせ先に連絡されるのが一番かと思われます。)

重要な注意:なお、御約束ではありますが、このエントリーを基に改造を試みた場合、雑誌発行元のサポートも受けられなくなるでしょうし、また上手くいかなかくて何らかの破損や故障その他の損害を被ったとしても、筆者は何の保証も補償もできませんので、試される場合はご自分のリスクで行ってください。

改造後の雄姿:)


事の起こり

DIME誌付録にアンプ付きステレオスピーカーが付くと聞いて、値段の事もあるし、そんなに期待はしていなかったのですが、購入してみました。早速iPhone等に繋いで音を出しますが、シャリシャリして酷く高音の目立つチープな音が出ます。そこでまずは定番のコンデンサ変更でちょっとは改善しないかと思い、交換してみました。


ところが相変わらずシャリシャリした音。スピーカーから50〜60cm離れると、どこから音が出ているか分からなくなる感じで、まるで2chスピーカーで疑似サラウンドの音を出しているような感じです。これはもしや… と思い、片側のスピーカーを塞いでみると、塞いだ時の方が音が大きく聞こえる!! 何と片側から逆位相の音が出て、全体的に音を打ち消しあっていました。そこで再度分解して右側の配線を反対に繋ぎ直したところ、変なシャリシャリ感が消えて、普通のコンパクトラジオ程度の音になりました。

で、同じような症状の人がいないかと、twitter で"DIME 付録"で検索して色々な方の呟きを眺めていました。すると、同じ症状の人がちらほらいらしたのですが、この症状が出ていない方(もしくは気づいていない方)が大半のようで、このような片側逆位相の配線ミスは一部のようでした。所が、twitterを眺めていると、どうもLチャンネルの音しか出てない と呟いている方を見つけました。自分の奴もそうなのか?とちゃんと確認してみると、Rチャンネルの音しか出てません。

しかたないので、基盤を眺めて回路を確認してみました。


何がおかしいのか

アンプ回路で使われている、アンプICは、TDA2822M で100円ショップで売っているアンプにも使われていたり、安価ですが簡単な回路でステレオアンプが組めるICのようです。

ただし、ノイズが出やすい、IC自体がノイズを出すなど、電子工作好きの人達の評判はあまり良くないようです。現にこのDIME付録も、音が無い時でもサーーっというホワイトノイズが聞こえています。

TDA2822Mのデータシートはこちら(pdf)で参照できます。
データシート記載のステレオ出力の参考回路がこちら。

そして、DIME付録の基盤を追いかけて確認した回路はこのようになっています。


ほぼ参考回路通りの作りで、出力側はちゃんとチャンネルが分離されているのですが、入力側がなぜかL,R分離されておらず、僕が購入したものはLが22kΩを介してRチャンネルに繋がれており、R側が抵抗を介して、本来ステレオアンプならば別々に入力しないといけないアンプICの両チャンネル(6,7番ピン)に一緒に入力されています(回路図赤線)。(下記の写真参照)すなわち、アンプの回路がモノラルになってしまっていて、片チャンネルの音が2つのスピーカーから出る回路になってしまっています。

上記写真を見ると分かると思いますが、基板上のパターンが明らかにステレオ回路になってないので、配線ミスとかいうレベルではなく、設計ミスか、そもそもモノラルで設計したとしか考えられません。

L側の信号は22kΩの抵抗を介してR側に入っているので、実質は殆どR側の音しか聞こえなかったのでしょう。R側はプラグとアンプIC入力の間の抵抗を電源兼音量スイッチで切り替えるようになっており、中音量の時は、100kΩ+51kΩ=151kΩを介して、高音量の時には、51kΩを介してアンプの入力側にLR一緒の信号が入っています。(ただし、高音量の時にはスピーカーが負荷に耐えられないようですぐに音が割れてしまいます)

ステレオ化

付録の回路をなるべく生かして、できるだけ簡単な手順でこの付録スピーカーをステレオ化する方法を考えてみました。幸いな事に回路の出力側はちゃんと左右分離された回路になっているので、入力側だけをちゃんと分離してあげればステレオ化できそうです。音量はスイッチが中音量の時の151kΩ抵抗の程度でちょうど良さそうだったので、L,R両方に150kΩ突っ込んで、L,R別々に入力しようと思います。
ただ、基盤は小さいのであんまり加工はしたくありませんでした。そこで、ついでにステレオ用の2連可変抵抗を入れて、ボリューム調整も出来るようにして、可変抵抗側に150kΩの抵抗をつけて、あとはパターンカットと配線のみで出来上がる方法を考えました。改造用の回路図は下記の通り。

(この改造では、スイッチで電源のON/OFFのみで高音量/中音量の切り替えはできなくなります。代わりにボリュームつまみで音量は制御できます)

パターンカットは2か所で、6,7番ピンの間と、入力スイッチの抵抗が繋がれているあたりは不要なのでここも切ります。(写真の赤線部分)
(追記:他にR7の抵抗を外す必要が有ります)

但し、6,7番ピンの間はカッターナイフで切るぐらいでいけるかと思ったのですが、案外ICの下の届かない部分まで基盤のパターンが有ったために、結局ICの片側を浮かして奥まで刃が届くようにしないとカット出来ませんでした。カット後再びICは戻して半田付けします。(たぶん、このIC片側浮かせ、戻すのが一番難しい)

そのあと、後で半田付けするため基盤の保護皮膜を少し剥いて半田の島を作っておきます。

ボリュームになる可変抵抗は、ケースに入るようにボディが小型の物を選びました。抵抗値は最大100kΩのもので、値はあてずっぽうです。これに左右両方の150kΩの抵抗を付けて配線します。
(最初忘れてたんですが、可変抵抗の反対側はGNDに接続してあげないとボリューム下げても音が殆ど下がりません。初心者なもんで凡ミスでした)

ケースには可変抵抗が綺麗にハマる位置にノブ用の穴をあけました。ケース裏にケーブルを格納する凹みがケース内で盛り上がってるので、すこしだけ削って加工し、可変抵抗の収まりがよいようにしてやりました。

で、ミニプラグからの入力と、可変抵抗と、先ほど基盤に作ったICの入力用の島を結線します。

仮組みして電池を接続してちゃんと左右分離して聞こえている事を確認し、
ケースを閉じて、可変抵抗を固定して、さらにボリューム回すツマミを付けて出来上がりです。

材料のリストです

部品 単価(参考:円) 個数 価格 備考
電解コンデンサ MUSE 100μF BP 40 3 120 ステレオ化には必要ではなく高音質化のために入れ替えたものです。間違ってBPにしましたが、BPでも問題なし
抵抗 150kΩ 15 2 30
2連可変抵抗 Aカーブ 100kΩ 180 1 180 オーディオ用なのでAカーブのものを
15x15 つまみ 294 1 294 結局ツマミが一番高価なパーツ!
合計 624 DIME誌の値段を越えてしまった :P

聴いてみると、一応左右別々に出ているのですがスピーカーが近いせいで全然ステレオ感はありませんね。自己満足のみです。
音は小型トランジスタラジオみたいな音で、このスピーカーユニットの特性だと思うんですが、人間の声から少し高い帯域までが出過ぎでイコライザ等で抑えないとかなりキンキンした耳障りな音が目立ちます。大きさのためか低音の方もサッパリなので、これもイコライザで持ち上げる必要が有ります。
あと元々の無音量でも聞こえるホワイトノイズは消えていません。

但し、最初に書いたようにコンデンサを音楽用のMUSEに替えてあるので、元々の音よりは多少ざらつき感が減って落ち着いた音になっているものと思われます。(間違ってBP=バイポーラ型コンデンサを買ってきてしまったんですが、特に問題はないようです)元が片側逆位相だったので、コンデンサ変更前の正しい出音が分からないので比較のしようがありませんw
他に、スピーカーコーンが高音寄りに暴れて音が割れやすくなってる印象をもったので、手元に有ったスポンジを加工して、コーンにやわらかく当たるようにして気持ち抑えています。効き目は不明ですが、若干キンキン、シャリシャリした感じが減って低音が締まった(といってもサイズが小さいのでほんのちょっとですが)ような「気がします」。

しかし、DIME誌も災難ですね。twitter見てると酷いノイズが出るものや、そもそも音が出なくて交換している人も結構居るようです。本当にステレオなのかどうなのかチェックする体制ができてなかったのは問題ですが、安いコストで中国ベンダに発注して失敗しちゃったパターンかなぁ…とか想像すると、この後どう対処するのかも含めてなんか不憫です。個人的には改造含め1週間程度楽しませてもらったんで交換しろとか思いませんが、せめてステレオじゃありませんでした御免なさいぐらいは言わないとまずいだろうなと思います。

以上、DIME付録アンプ付きスピーカー(モノラル)をボリューム付きでステレオ化の記録でした。


追記:本エントリの改造では、ミニジャックからの入力を基の基板上の接続点を利用して配線したために、基板上のR7を外さないと相変わらず左右入力が抵抗を介して若干混ざる事になってしまいますので、R7は外す必要が有ります。気がついた後でR7は外してありますが記事の写真では残っておりますのでご了承ください。